“奄美大島泥染工房OHSARI”奄美の伝統染色“泥染め”で「トライバル・民族・サーフ」柄のTシャツ等を作っています。

〜泥染めとは・・・(泥染めTシャツができるまで。)〜

1300年の歴史があり世界三大織物の一つといわれる奄美大島の特産品「本場大島紬」。
その最大の特徴は「織りあげる前の糸自体に染めない箇所を作ることで色分けをし、織る(縦糸と横糸が交わる)事で模様が作られる。」というところにあります。
模様を確認しながらすこしづつ手織りされるその作業はとても緻密で複雑で繊細です。

大島紬を完成させるまでには大きく分けても約20〜30(細かくでは数百)もの工程がありますが、その工程の一つで前述した糸を染める際に使われる方法を泥染めと言います。


その方法は、まずはじめに奄美大島に自生するシャリンバイ(テーチ木)を伐採し、専用の大きなチッピングマシンで細かくチップ状にします。
そしてそれらを大きな釜にたっぷり入れ水をはり、ずっと強火で沸騰させたまま10〜24時間以上かけてじっくり煮込みシャリンバイの液を抽出します。
抽出した液はその後約一週間ほどかけて熟成させ染料となります。

こうして作られた染料は、タンニンを多く含んだ独特の臭いがする少しトロッとした褐色の液体となります。当工房の釜では一度に約400リットルの染料を抽出します。


ここからは染めの工程、まずは「テーチ木染め」です。
まず染料を適量桶に取り分け、この液の中にTシャツなどの染めるものを漬けよく揉みこみます。ゆっくりゆっくり、時間をかけてただひたすら揉み込んでいきます。
(丁寧に揉み込むことにより染料中の主成分タンニンを布に浸み込ませていきます。)

しっかりと揉みこんだ後は石灰水に漬けてタンニンの付着力を高めます。
そしてまた、染料に漬けてまたひたすら揉み込んでいきます・・・。
この工程を何度も繰り返すうちにTシャツは次第に赤褐色〜茶褐色に染まっていきます。


そして、いよいよ泥田で染めを行います。
泥田とは泥染めをする為の「田んぼ」のことで、米を作る水田とは違います。
以前はかなりの数があったのですが今ではほとんどなくなってしまいました。

今も現存する泥田の多くは、写真のように山裾の木々が密集したところにあります。
猛毒のハブにも注意が必要です。

 


そしてこの泥田の中にTシャツを漬け、丁寧になじませていきます。
すると、泥の中の鉄分がタンニンと反応し、赤褐色だった布は次第に茶〜黒褐色に染まっていきます。
そして・・・納得のいく色になるまでまた最初の「テーチ木染め」からここまでの作業を繰り返します。
奄美大島の泥田は鉄分を多く含んでいます。この泥とシャリンバイがあればこそ、ここ奄美大島にしかない大島紬と泥染めがあるのです。



ここからは泥染めしたTシャツに抜染(ばっせん)という技法で模様を入れていく作業を紹介します。
抜染するためにはまずデザインを決め、抜染用の型紙を使い「型作り」作りを行います。
専用のカッターを使い根気良く丁寧に型を抜いていきます。
そして作られた型に薄い網状の“斜(しゃ)”を張る作業「斜張り」を行い型作りは完成です。

こうして作られた型をTシャツの上に置き、抜染液(色を抜く専用の薬品)を塗っていきます。


そして型を外し抜染液を洗い流すと抜染液の塗られたところだけが脱色され模様がつきます。
化学染料で染められたものの場合、抜染されたところは白く抜けるのですが、泥染めの場合ムラのある薄茶色になります。この抜け方がまた一つの風合いであり、とても気に入っているところです。
抜染は作業に手間暇がかかることから高級なものとして扱われています。
 


ここまでの工程をざっと紹介しましたが、途中の乾燥や洗浄といった時間ばかりかかる作業や、その他の細かい作業などは紹介しませんでした。泥染めTシャツを商品として完成させるまでには、ここからさらに色止め作業や数回の洗浄・乾燥を行わなければなりません。
これらの作業全てを合わせると一着完成させるまでに約4〜7日程度かかります。泥染めTシャツはこうして時間と手間ひまをかけて作られています。